462人が本棚に入れています
本棚に追加
稽古後の屋上は、すっかり日が暮れていて。吹いてくる風が少し肌を冷たくする。
「え……!」
だけど、フェンス越しに見える光景に見惚れた。
「綺麗だろ」
鮮やかなオレンジ…… 紅くも見える夕焼け。
陽が落ちだした下に見える高低差の様々な建物が並ぶ街並み。
あ―― 一瞬、強い風が吹き抜けて、私の長い髪が舞い上がった。
ふわっと。首に絡んで来る蓮の両腕に包まれる。背中が蓮の体温であたたかい。
「七海…… 思い出した?」
頬のすぐ後ろから、蓮の息がふれる。小さく顔を横に振る。やっぱりなんのことかわからなくて。
「……っ」
耳たぶにふれた蓮の唇が耳元へ囁く。
「約束も…… 忘れた?」
唇がうなじをなぞって落ちて行く。
背後から抱き締められてる腕に力が入っていく。
最初のコメントを投稿しよう!