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「どうして、茂木さんが怒鳴るなんて」
この事実に対して喧嘩をしたのは明白だった。
「私がね、結婚しないって言ったの」
また、ぽろって涙が溢れ落ちる。
「だって、大智くん。田舎に帰って稼業を継ぐって」
「梨花さんと一緒に?」
頷いた梨花さんの目には涙がいっぱいだ。
話を聞くと、海外への栄転を断り、稼業を継ぐ。そう言った茂木さんに、梨花さんは思わず生まない、結婚しないと宣言したらしい。
「大智くんの夢を壊したくないの」
それは茂木さんがずっと、望んでいた仕事なのだと、梨花さんがまた泣いた。
夢って、叶えたいもの。だけど…… 茂木さんにとってはそれよりも梨花さんが大事だったんじゃないのかな。そう思ったら、言ってあげられる言葉はひとつだった。
「壊されたなんて、きっと茂木さんは思ってないです」
夢より大切なものが、誕生するのだもの。茂木さんはそういう人だと思う。
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