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「ありがと、七海ちゃん」
少し落ち着いた梨花さんを部屋に残して、一階へと戻る。立ち上がった茂木さんが、不安げにこちらを見るから、思いっきり微笑んでみせた。
「ありがとう」
私と入れ替わって、茂木さんが二階へと駆け出していく。
蓮と二人でリビングに取り残されて、お互いに顔をじっと見合わせた。それからおっきなため息。
行こう―― 背中を押されてリビングの奥へ。狭い通路を抜けて突き当たり。
「七海も右側ね」
細くて長い指が、手首を摑んで引っ張った。
「え……っ」
え――っ!? 屋上での出来事が、瞬時に頭に浮かんで動揺してしまう。
「固まるなよ」
笑った顔をした蓮に、もう一度引っ張られた。
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