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蓮の部屋に入ったら、渡されたのは台本。
「何か期待した?」
くすくす笑うなっ。普通は緊張するものなの。男の人の部屋に入るんだから。
だけど、あれ? なんだか妙にシンプルな蓮の部屋を見渡す。ベッドとリビングテーブルしか無いんだけど。殺風景なのは越して来たばかりだから?
「あぁ、気になる?」
私の疑問を感じ取ったのか、蓮がベッドの上にどさっと座り込みながら答える。
「また引っ越すから。荷物は少なくていいんだ」
「また……?」
小さな傷みが胸を刺す。いなくなっちゃうんだ。
「舞台が終わる迄はいるから」
稽古の期間があって、公演の時期があって…… それってどれくらいなんだろう。
「だから、それ」
蓮の人差し指が、手にした台本を指す。
「受けなよ、オーディション」
えええ――! さっきよりもびっくりした。
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