隣は何をする人ぞ

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 朝の会が始まる直前、登校後の短い自由時間に、美紗はいつも通りの会話を楽しむつもりだった。  だから、 「美紗ちゃんは北見くんが好きなんだよね」 唐突に断言された内容に対してうまく反応できなかった。  怜香にそう言ったのは確かに美紗だったから、余計に真正面から否定しがたい。  ただ、怜香とその話をしたのは二年ほど前だった。しかも、“好きな男子を言い合う”というその場の雰囲気に流されて何となく口にしてしまった、当時のクラスの盛り上げ役だ。 「新田くん、残念だねぇ」  台詞を放った佳苗は、新田や北見と同じサッカー部。大雑把で、繊細な気遣いからかけ離れた性格だ。この台詞も、含みがあったり探りを入れるような類いのモノではなく、ただ、彼女の感情そのままの言葉だろう。  他の四人も、佳苗に合わせてあははっと笑っている。こちらは、クラスの違う新田と親交がないから、佳苗ほどの感情もなさそうだ。ネタとして扱っているにすぎない。  美紗も、出身小学校が違う新田のことは、顔すらよく思い出せない。  好かれて嬉しいというよりも、面倒臭いなと思ってしまった自分を少し責めながら、美紗は場に合わせて小さく、苦々しく笑った。
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