これまでのいきさつ?

1/12
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

これまでのいきさつ?

 四月も終わりに差し掛かり、間もなくゴールデンウィークが始まろうかというその日の放課後、俺、松原智樹(まつばらともき)は帰宅途中にある宇祖(うそ)神宮に立ち寄った。  ふと、境内の隅にひっそりと佇んでいる枝垂桜(しだれざくら)を見たくなったからだ。  この辺一体の桜の花は、四月も半ばになると全て散ってしまうのに、何故かこの桜だけは遅れて咲き誇るのだ。  桜の花というよりは、舞い散る桜の花びらを見るのが好きな俺は、木の根元まで来てそっと木の幹に触れながら上を見上げた。  それに応えるかのように優しい風が吹き、花びらがはらはらと舞い落ちる。  それを目で追っていると、足元に何かが落ちているのに気が付いた。  ここに来た時には気が付かなかった。  この場に似つかわしくないそれは、一見すると少し前に流行った携帯ゲーム機のように見えた。  
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!