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完全予約制の情報屋カセイ
カセイが捨てに捨てた、燃えないゴミを外のゴミステーションに捨てに出ると、横から声をかけられた。
「あ、ねぇねぇ、そこのあんた!」
振り向くと、可愛いフォルムの軽自動車の運転席の窓からこちらを見ている妙齢の女性が手を振っている。
「はい……。何でしょうか」
ゴミを捨ててから軽に近づく。遠くから見ても、近くから見ても、可愛らしい外見のその人は、へへっと笑った。
「やだわ、もう! 何でしょうかって、澪子ちゃんに用があって来たのよ」
「あっ……」
やっと思い出した。そうだ、以前にもこんな可愛い見た目の人、情報屋カセイ《うち》に来てたような。
「もう、暫く来てないからって忘れないでよね~。お得意の顔ぐらい、覚えとかなきゃ、ダメよ!」
「はい。大変失礼しました」
俺はタオルハンカチで手についたゴミの匂いをごまかすと、そのまま可愛いお得意を部屋へ通した。
「お邪魔しま……。相変わらず、澪子ちゃんは堕落してるわねぇ。今度、片しに来ようかしら」
「あら、市旗伯母さん。ご無沙汰してます。片付けならうちの部下である鷲野さんがやってくれるので、無用ですよ」
「あら、そうなの? これだけ本の山、山、山だと、整理整頓するの大変じゃない、鷲野くん?」
いやいや、それは俺の仕事じゃないんだけどなァ。市旗さんも簡単に信じないでくださいよ。
カセイさんから無言の重圧的視線を感じたので、一応フォローしとくけど。
「もう慣れましたので、大丈夫です。ご心配には及びません」
市旗さんがカセイの向かい側のソファーに腰掛けてすぐ、俺は本題に入るよう仕向ける。
「それで、今日はどういった情報を頂けるのでしょうか」
「まぁ。そう急かさないでちょうだい。先ずはお茶出しなさいよ。あたし、温かいローズヒップティーがいいわ」
「しゅー君、私はアップルティーがいい!」
すぐに言われたとおりにそれぞれ注文通りに紅茶を用意したところで、市旗さんの情報提供が始まった。
「最近さ、何かと黒い噂ばかり聞くようになった、例のショッピングモール――ライフビューティフルJewelの店員の子がさ、失踪したらしいのよ」
「失踪した店員の名前は?」
「青灯凪乃、だったかしら。あたし、噂が立ってからあのショッピングモールに行ってないから、よく知らないのよね」
「では、失踪の心当たりも……?」
「特には。だって、もう二ヶ月ぐらい行ってないんだもの」
「情報提供はそれだけ?」
「今のところはね」
くい、くいっと、市旗はティーカップの中の紅茶を飲み干すと、ソーサーの上に静かに置いた。
「ふうん」
「で、いくら貰えるのかしら?」
カセイは自分の横に置いてある紙袋から領収書の用紙の束から一枚を取り出すと、さらさらと金額を書いていった。
書きながら、カセイさんは言う。
「今聞いた感じだと、ちょっと少なすぎるけど、情報屋カセイ《うち》はどんな情報も一律2万なんで、こちらとしては今回はやや痛手だけど、二万円、払います」
カセイは自分の真後ろの机の引き出しから小型のアタッシュケースを取り出し、中から二万だけ出して、数を確認してからキャッシュトレーに置いて、市旗さんの前へ。
市旗はキャッシュトレーから二万を受け取ると、数をきっちり数え、長財布へ入れた。
「二万円、きっちり頂戴したわ」
「また何かあれば、すぐに連絡ください」
市旗は財布をカバンへ仕舞うとすぐに帰っていった。
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