0人が本棚に入れています
本棚に追加
「さっきの無茶ぶり、何だったんですか! 何で俺が仕事以外のことまでしなきゃなんないんですか。聴いてないですよ」
使用済みのティーセットを洗い終えた俺は、再燃した怒りにまかせて言ってしまった。
カセイさんはティーポットにまだ残っていたらしいアップルティーを自ら注いでいる。目は何故か嬉しそうだ。
「だって、そう言ったほうが楽じゃない? しゅー君だって知ってるでしょ、伯母さんの世話やき癖。私はあれが鬱陶しくてね」
「カセイさん、めんどくさがりですしね」
しまった。つい口を滑らせ本音が出てしまった。
カセイさんの鋭い眼光を感じる。逃げたい。
「むっ。何か言ったぁ~?」
「いいえ、何でもありません!」
「ふうん」
カセイさんがふうんと返した時は、決まって納得していないときだ。
不満げだけど、それを気にしたら負けだ。
――っと、突然電話が鳴った。もちろん、俺が電話に出た。
「もしもし。……あ、情報提供ですね。何時が宜しいですか? ――午後八時ですね。では午後八時ということで予約をおとりしました。では」
「相手は?」
「先ほどの市旗さんの旦那さんだそうです」
「例の失踪事件絡みの情報かしら」
「かもしれませんね」
俺は自分用の紅茶(ダージリンティー)を淹れるべく、台所からティーセットを出した。
最初のコメントを投稿しよう!