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100点満点の未来
麻衣さんがスマホをかける。五分もしないうちにパトカーが来た。
後部座席に並んで座る。
麻衣さんが首にかけた身分証明書を僕に突きつけてくる。
「警察庁
特別捜査部関西担当捜査員」
「東京オリンピックを控え、日本の国際化が急速に発展する中、検挙率の向上は急務。
警察庁は日本を六つのブロックに分けて、それぞれのブロックの捜査員を三人常駐させている。
わたし、関西ブロックの担当。警察庁が重大事件と認めた案件について、各地の警察組織と連携して早期解決を図っている」
パトカーが警視庁本庁の玄関前に着く。
母が元特捜検事の関係。僕だって、警視庁の刑事さんたちは多少知ってる。
松山洋介警部と白木文婦警が、にこやかに麻衣さんを出迎え、僕を見て目を大きく見開く。
「大切な友人です。」
麻衣さんがおごそかに告げる。
「最上階のスカイレストランの特別席に案内してください。
松山警部。わたしの友人の学校カバンとセカンドバッグを持ってください」
「ハイッ」
松山さん・・・
まちがいなく喜んでない・・・
警視庁のスカイレストランって初めて来た。
奥の部屋に入り、円形のテーブルに向って腰を下ろす。
麻衣さんはスカイレストランでフランス料理のディナーを注文。
「あの松山洋介さんという人。もうすぐ刑事部長になるんじゃない。
日下君、知り合いでしょう」
たぶんそうだって思う。
「わたしの立場分かった?」
僕、なんにも答えない。
「スコットランドヤード大学卒業。給料も高い。
わたし、一生懸命仕事するつもり。
将来、警察庁の幹部か警視総監めざしてる。
夢物語とは思わない。
仕事は忙しくてもやりがいはある。
順調で安定した人生が約束されている。
優等生の君なら分かるよね」
スコットランドヤード大学のことは、母から聞いた。
超難関の入学。優秀なら短期で卒業できるけど、六年かかってもまだ卒業できない人もいるって・・・
麻衣さん、僕の顔をまっすぐ見つめてくる。
「ふたりで百点満点の家庭つくらない?」
そう言ってニコニコ笑う・
「日下君がつきあってる月影サキさんに、未来はあるの?」
僕、下向くしかない。
「援助交際の話に乗せられて、破滅した何十人もの人たちの話。わたし、重大な関心を持っている。
遠くない将来。犯人は逮捕するから。
よく考えて」
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