LAST

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LAST

(ここはどこ?) 暖かな光があたり目が開く。 目を覚ますとまわりはいろんな色の花々に囲まれその一つ一つが心地よい香りを漂わせていた。 (私は……そしてきっとここは……) その単語を言おうとすると急に自分が亡くなったことを突きつけられた気がした。 (こんななんだな。) どこかぼんやりしたまわりの景色は死者を優しく迎えるように輝いていた。 (あっ………この花は…………) 生前私があの人にあげたアネモネ。 2つ仲良く並んで咲いている。 (ここでも見れるなんて思ってなかったな) 急に寂しさが襲ってくる。 息子夫婦はこれから大丈夫だろうか。 そしてあの人は……… 私の目には悲しみが形となって現れる。 生前は息子に心配かけないように。 いなくなったあの人に弱さを見せないように。こんなふうに泣いたことはなかった。 私は膝を抱え込む。 まるで赤子がわんわん泣くように。 その時 「あの………」 急に声をかけられる。 私ははっとして顔を上げる。 そこにいた人をみて私は抱きつく。 彼も私を強く抱きしめる。 そして言う。 「やくそくをまもってくれてありがとう。」 「ああ。」 FIN
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