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これはなんだ?
何かのドッキリなのか?
それとも、まだ酔いが醒めていないのか?
「信じられませんか?」
また彼女が、僕の脳内質問に答えた。
「にわかに信じ難いお話だと思いますが、本当のことなのです」
少しも表情を変えず、彼女が言った。
信じられるはずがない。
突然ウサギが現れて、そのウサギが女性になって、それが月の精で……。
一体、何をどう信じろというんだ?
僕は彼女の瞳を見つめ返した。
窓から差し込む月の光にも似た、青く澄んだ瞳。
その瞳には、一点の曇りもなかった。
とても嘘をついているようには見えない。
信じろと言う方が無理だと思うが、とりあえず今の僕には、目の前のこの状況を受け入れるしか道はないらしい。
ようやく喉元に言葉が上がってくるのを感じた僕は、意を決して彼女に質問することにした。
「もし、大切なものが見つからなかったら?」
「それはもちろん、帰れませんね」
「もし、帰れなかったら……?」
「それは……」
突然彼女は口籠り、瞳を少し潤ませた。
「……消えます。光になって……。私は、地球では生きられないので……」
……!
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