満月

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再び頭痛が襲ってきた。今度は目眩のおまけ付きだ。 僕は頭を抱えたまま、上目遣いに彼女の顔を覗き込んだ。 「じゃ……じゃあさ、あと残り二十九回ってこと?」 動揺する僕に、彼女は涼しい顔で答えた。 「いえ。新月の夜は地球に光が届かないので、前後三日間は難しいかと思われます。その他、月が雲に覆われていたり、見えない位置にあったりすれば審査は不可能。よって、実際にはもっと少なくなるかと……」 おい。他人事のように言うなよ……。 まるで、携帯電話の料金説明でもするかのような事務的な口調だ。あとひと月足らずで消えてしまうというのに……。 強がっているだけなのか? それとも、恋愛経験ゼロの僕には、到底計り知れない『女心』というものがあるというのか? まあ、所詮理解できないものをグダグダと考えていても仕方がないので、とりあえず、ここまでの状況を整理する。 「君の言うことはわかった。つまり、僕の大切なものを探し出し、これから毎晩審査してもらう。ただし、月の光が地球に届いている時だけだ。合格すれば、君は無事、月に帰れる。不合格なら帰れない。タイムリミットは次の満月。それまでに合格しなければ、君は、その……消えてしまう。光となって……」 「はい」 ゴクリ、と、僕は喉を鳴らした。
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