満月

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「月の審査は、一日一回。で、今日の審査は不合格。つまり、ゲームオーバーだ」 「ゲームオーバー?」 「まあ、終了ってこと」 そこまで言うと、僕は大きく息をついた。 自分でも気付かないうちに、かなり緊張していたようだ。 無意識に握りしめていた両手が、じっとりと濡れている。 開いた両手をスウェットパンツにこすりつけながら、僕はふと時計を見た。 いつの間にか、日付が変わっていた。 「あのさ、いろいろ聞きたいことはあるけど、今日の僕はもうキャパオーバーだから、続きは明日にしよう。どうせこうしていても、審査はできないわけだし」 「そうですね」 機械的な動きで、彼女が頷いた。 「あ、とりあえず、名前教えてもらえるかな? 僕は須藤(すどう)(はじめ)。みんなからは、マジメって言われてるけどね」 「マジメ?」 「いや、ハジメだし」 「ハジメ……」 「うん。で、キミは?」 少し首を傾げた後、彼女が訊いた。 「……名前って?」 「はいっ?」 彼女が、不思議そうに僕を見つめている。 「えっと……。まさかと思うけど……。もしかして、無いの? 名前……」 「……名前って?」 はい。 それ二回目です。 無いのか……。名前……。 もう、どうしてくれようか……。 ちょっと、泣きたくなってきた。 お月さま。 お願い。 助けてよ。 これはもう、僕のキャパをはるかに超えている。
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