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教室に入ると、窓際の中段に視線を走らせる。
いつもの席が空いていることを確認し、僕は急いで歩を進めた。
定位置に腰を下ろし、教科書やら筆記用具やらを机に並べていると、いつものように冬馬が隣に腰掛けた。
「昨日あれから、ちゃんと帰れた?」
昨日って……?
ああ。
合コンの事か。
昨夜はなんだかいろいろありすぎて、合コンが遥か遠い昔の事の様に思える。
「ああ」
僕は気のない返事をした。
「誰かいい子いた?」
「別に」
「LINEとか交換した?」
「してない」
「……しょーがねーなぁ」
両手を高く上げて伸びをすると、冬馬は背もたれにどっかりと身体を預けた。
「何で、お前はそうなんだろうねぇ」
『そう』って、何が?
心の中で疑問をぶつける。
「俺はさ、お前かなりイケてると思うんだよ。俺がその顔だったら、マジ、パラダイスだろ」
冬馬が僕の顔を覗き込んだ。
「有効活用できねーんなら、俺にくれよ。その顔」
また顔の話か……。
いい加減うんざりする。他に話題はないのだろうか。
そんなに顔が重要か?
あげられるものなら、いくらでもくれてやろう。
とにかく僕は、この顔には全く興味がない。
加えて言うなら、女という生き物にも全く興味がない。
もう一つ加えて言うなら、友だちとかいう不確かな存在にも、全くもって興味がない。
僕はやっぱり、どこかおかしいのだろうか?
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