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満月
「ううっ……。頭痛い……」
どこをどうやって歩いて来たのかわからない。
痛む頭を押さえながら、僕はアパートに向かい、重い足を引きずっていた。
あと少し。頑張れ。
自分で自分を励ましながら、まるでフルマラソンの選手みたいにゴール目指して一歩一歩進む。
人数合わせで呼ばれた合コン。
最初は興味本位で話しかけてくる女の子たちも、五分で飽きて他の場所へと移っていく。
当然だ。
自慢じゃないが、僕には会話のスペックがない。
『お前、顔はいいのに残念だよな』
友人らしきやつらは、いつも勝手なことを言う。
何が残念なんだ?
別に『残念』なんて思ったことないし。
ふらつきながらも、ようやくアパートの階段までたどり着いた。
よし、ゴールはすぐそこだ。
最寄り駅まで徒歩五分の、ありふれた木造二階建てアパート。
二階の角部屋、201号室が、僕の住居だ。
階段を登ろうとした時、足元に違和感を覚えた。
「なんだ?」
薄れゆく意識をなんとか保ちながら、階段の端っこを見た。
何か白いものがある。
白くてふわふわしたもの。
それはまるで……。
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