下弦

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幸い、午後の講義は冬馬たちと専攻が違ったので、彼らとは顔を合わせることなく一日を終えることができた。 別に悪いことをしている訳ではないのに、何となくコソコソ隠れてしまう自分に嫌気が差す。 帰宅するとすぐに、シャワーを浴びた。 寒い。 雨に濡れたせいなのか、それとも他のことが原因なのかわからないが、僕は心身ともに冷え切っていた。 シャワーで少しだけ温まった身体を洗いたてのTシャツで覆う。 濡れた頭をタオルで拭きながらテレビをつけると、雨の音と共にアナウンサーの緊迫した声が流れてきた。 「……台風十八号は、以前勢力を保ったまま北上しており、今夜遅く関東地方に上陸する模様……」 台風? そういえば、この間からなんか騒いでいたような……。 「ウサギ……」 ウサギがベッドの上にちょこんと座ったまま、紅く澄んだ瞳を僕に向けた。 「台風来るって。残念だけど、今日の審査は受けられないね」 ウサギは相変わらず、鼻をヒクヒクさせている。 僕は、審査が先延ばしになった事を、心のどこかで、少しだけ、喜んでいた……。
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