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「風、強くなってきたね」
カーテンを少し開けると、まるで滝の裏側から見ているみたいな光景がそこにあった。
大粒の雨が大きな音を立て、窓ガラスの上を流れている。
大きくなった風の音が、何かを巻き込みながら、獣のような咆哮を上げた。
突然、辺りが闇に包まれた。
「停電だ……」
僕はスマホの明かりを頼りに、本棚の引き出しから懐中電灯を引っ張り出した。
念のために買っておいて良かった。
ほんのり明かりが灯ると、不思議と部屋の温度が上がった気がした。
「ウサギ。大丈夫か?」
ベッドの上を見ると、ウサギは先程と同じ姿勢で、薄明かりの中、僕の顔をじっと見つめていた。
紅い瞳が懐中電灯のLEDに照らされ、キラリと輝いた。
僕は懐中電灯をテーブルに置くと、ウサギの隣に腰掛けた。
「おいで」
そっとウサギを膝の上に乗せ、その柔らかな丸い背中を優しく撫でる。
気持ちが良いのか、ウサギは眠そうに目を細めた。
右手で背中を撫でながら、僕の左手は自然とウサギの頬に吸い寄せられていく。
額から目にかけてそっと親指を滑らせると、ウサギは少し顎を上げて目を閉じた。
「ウサギ……」
無意識に名前を呼ぶ。
ウサギが僕の方に顔を向け、『何ですか?』いつものように無表情で答えた気がした。
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