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そんな僕をじっと見つめながら、彼女はおもむろに言った。
「それは、大切なものですか?」
え?
彼女の差している指の先には……。
今隠したばかりの僕のパンツがある。
「あの……。これはちょっと……」
「脱いでください」
「へっ?」
「脱いでください」
少しも表情を変えることなく、彼女が僕に近付いてきた。
まるで氷の上を滑るように、彼女はゆっくり近付いてくる。
「おわーっ! わかった! わかったから!」
僕は半ばやけくそになって、バスタオルの中のパンツを脱いだ。
下を向きながら彼女にパンツを手渡すと、彼女はそれを大切そうに両手に乗せ、先程と同じく滑るような動きで、窓際まで歩いて行った。
そして、呆気に取られている僕の目の前で、それを高く掲げ、月の光にかざしたんだ。
そう、僕のパンツを!
シーン……。
何も起こらない。
そもそも、僕のパンツで、一体何を起こそうとしたのだろうか?
しばらくしてから、彼女はガックリ項垂れると、僕の方に向き直った。
「これじゃないです」
とても悲しそうだ。
「ああ、ごめんなさい」
パンツを受け取りながら謝る。
……って、僕のせいか?
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