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「ウサギ?」
さっきまで彼女がいたところに、ウサギがうずくまっている。
「なんだこれ! 手品かっ?」
慌ててウサギに駆け寄る。
そっと抱いてみたが、どこも異常はないようだ。
「あれ? さっきの人は……?」
混乱する頭を落ち着かせる間もなく、僕はウサギに問いかけた。
ウサギに訊くほど混乱していると言えば、だいたいどの程度かわかるだろう。
僕の質問に答えるかの如く、ウサギが首を持ち上げカーテンを見た。
え? 開けろってこと?
理屈では到底説明できないが、この時僕は、なんとなくウサギがそう言っているように思えたんだ。
僕は、震える手でカーテンを開けた。
ゆっくりと開かれるカーテンの隙間から、青白い光が差し込み、ウサギの身体を徐々に照らしていった。
全体が照らされた時、突然ウサギの身体が光り輝いた。
あまりの驚きに、僕はウサギを抱いている手を離した。
いや、正確には放り投げたんだ。ウサギ、ごめん。
僕の手から落下したウサギは、器用に着地を決めると、今度はさっきと逆の順番で大きくなっていき……。
あっという間に、女性の姿になった。
「……!」
僕は、後ろによろけて尻餅をついた。
完璧に、言葉を発する機能が失われた。
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