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下弦
あれから四日間、順番に審査を受けてみたけれど、どれも惨敗だった。
確かに、あのラインナップの中で、財布より上位にランクインするアイテムがあるとは思えない。
当然と言えば当然なのだが、やっぱり少し凹む。
それは同時に、四日前に過ぎったあの予感が、見事的中したことを意味する。
『僕に、誰かと繋がるツールなんて、必要なのだろうか?』
答えはノーだった。
――オマエハ ケッキョク ヒトリ ナンダ――
月にまで、そう言われた気がした。
「よし」
僕は、最後のアイテム、印鑑を握りしめて立ち上がった。
「ウサギ。ごめん。これも違う」
「なぜ?」
「なぜって……。僕にはわかるんだ。だって、こんなものは、いくらでも替えが作れる。すなわち『一番』ではない。そうだろ?」
ウサギは、しばらく印鑑を見つめた後、「……はい」と、アクアマリンの瞳を僕に向け、頷いた。
「じゃ、そうとわかれば……」
勢いよくカーテンを閉めると、僕はウサギを抱き上げた。
「少し、散歩でもしないか?」
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