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40、由真不足1
「えぇ、これから、体育祭についての打ち合わせを始めたいと思う」
チャイムが鳴り教室に担任が入ってきて開口一番に出たのは、体育祭についての話だった。
「ねぇねぇ、黒澤ってさ、2年の子と仲が良かったよね?
転校したって聞いたけど、今年はどうするの?体育祭」
隣の席の奴が声をひそめながら尋ねてきた。
去年、まだ由真との関係もそこまで親しいってほどじゃない頃、俺と由真は部の顧問の無茶ぶりで、体育祭の実行委員を任された。不慣れなことばかりだったけど、過ぎた今となっては、あの体育祭が由真との距離を近づけてくれた。いい思い出だ。
「...そうだなぁ...。今年は、参加するだけでもいんじゃね?
俺も、参加側に回りたいってのもあるんだけどね」
本来なら、前年引き受けた人間がまた、同じように関わるケースが多いけど、今回は、やんわりと断ることに成功した。助言ぐらいはできるからと、言えば、無理強いしてこない、いいやつらだ。
「やっぱり、南沢が居ねーと、お前、やる気が出ねーみたいだな?」
吉田の言葉に、そうなのかもなと、思う自分がいた。
机に肘をついたまま、窓の外を見る回数も増えているような気がする。
「ほら、また、したな」
ー?
吉田のセリフに、何の事かと思った。
「ったく、自分で気づいてねーんだから。お前、窓見ては「はぁ...」って、ため息ついてんだけど、気付いてねーの?」
向かいの席の奴の椅子を拝借したやつは、持っている漫画に視線を向けながら言った。
え...。
マジで?
「俺、そんなにたくさん、してた?」
チラッと視線を外した奴が、
「それで、女子が「きゃーっ!黒澤が恋のため息をついてるっ!」って、騒いでた」
つい、眉間に皺がよってしまった。
「マジか」
女子の話はどうでもいいが、無意識で自分の感情が零れ落ちている時点で、かなり重篤だと思った。
由真不足。
傍から言われて気づく黒澤だった。
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