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4、素直になれないけど、繋がる
正式に?っていうか、まぁ、お互いに好きだって気持ちを確かめれた次の日って、顔を合わせるの、気まずいのって俺だけ?
照れるよ、嬉しいって顔を見せたくないって気持ちも分かる。
だって、ぜってー、間抜けな顔してるからな。
だから、いつも会うタイミングをずらして登校してみた。
「あれーっ!お前ら、そろって、珍しいなぁ。」
「...。」
「...。」
吉田先輩は、俺と先輩に声をかけた。
作戦は、失敗だった。
先輩も同じことを考えてて、ずらしてんのに同じところで鉢合わせ。
「「あ。」」
マジで、気まずい。
頭の中は、動揺しまくり。
えぇ、ここで会う?なんで?って。
でも、先輩も同じ考えなんだと、考えることが変わってくる。
なんで、ずらしたのって。
自分だって同じことをしてるのにね。
お蔭で先輩と会っても会話は弾まない。
不思議だよね。
昨日の夜はあんなに一緒に居たのに。
「...ミナミ、...また、あとでな」
「はい...先輩。」
この時の微妙な空気、吉田先輩に気付かれてた。
1時限目が終わって、廊下に出たら吉田先輩につかまった。
「南沢...ちょっと、こい。」
連れられて行ったのは、人のいない教室。
「...俺の勘違いだったらいいんだが、お前、あいつとなんかあった?」
―!
吉田先輩の質問に俺は、固まってしまった。
さーって頭の中が真っ白になる。
なんで...。
「あーっと、深く考えんな。困らせるつもりで来たわけじゃねー。
あいつ、黒澤と何かあったのか?」
どうしよう...。
こんなこと、黒澤先輩と相談もしてないのに、答えるなんて俺はできない。
「...た、たまたま、時間をずらして家を出たのに、同じタイミングでいつもと同じように先輩と会ったから、驚いたんっすよ。...たぶん」
吉田先輩は、俺のことを観察してた。
けど、俺の言葉を一応、信じてくれる形をとってくれたようで
「へぇ、そう。 じゃぁ、痴話げんかって訳じゃねんだ。」
って返してきた。
「...痴話?そ、そんなんじゃないですよ、なーにを言ってるんっすか。」
ドキッとした。
誤魔化せたつもりもないけど、まさか、吉田先輩からそんな言葉が出てくることは思ってなかった。
「いっつもお前とあいつってイチャイチャしてただろう。 別にそれが不愉快とかじゃないってのはあるんだけど、実際、どうなってんのが俺の見解。付き合ってるなら、今日のぎこちないのもわからんでもないし、ただのケンカなんだったら、早く仲直りしなさいって話。な? お前らのやり取りは、俺らの癒しなの。 なごみなの。」
そんな風に言ってもらえるとは思わなかった俺は、素直に嬉しかった。
「...はい。 吉田先輩、ありがとうござい「ミナミっ!」...っ!」
!?
教室の扉が勢いよく開いたと思ったら、黒澤先輩が焦った様子で入ってきた。
「裕斗、お前、このメールはなんだっ!」
吉田先輩に向かって黒澤先輩は掴みかかる勢いで近づいていった。
「あぁ、それは、罠」
?
吉田先輩はヘラヘラと笑いながら扉の方に近付いていき
「じゃ、お前ら、しっかり話せよな」
って、出て行ってしまった。
なんだったんだー?
俺、てっきり相談に乗ってくれたのかと思ってたんだけど。
2人きりになった教室は、静かになってしまった。
授業の始まるチャイムの音が聞こえ、先輩を見た。
「...このまま、俺と話すか。それとも、授業にでるか。南沢が決めていいよ。」
先輩は、顔を見られないように俺に背中を向けたままそう言った。
うーん。ずるい。
―!!
ギュッと先輩の後ろから俺は抱き着いた。
驚いて息を飲み込む先輩の音が聞こえ、調子に乗った。
「俺は先輩と話がしたいっす。 先輩は、なんでそんなに急いできたの?」
ため息をつきながら見せてくれたのは、とある画面。
それは、悪魔のようないたずらっ子のアイコンが貼り付けられていて
「これから、南沢に告ってくるっ!」って、書いてあった。
吉田先輩の名前を添えて。
「...これが届いたのって、本当にさっき。 マジで焦った。 お前のクラスに行ってもいねーし、これって、まじじゃねーかって思った。 」
それって、俺の事を心配してきてくれたってことだよな。
すげー嬉しい。
俺は一度先輩に抱き着いてしまったから離れるのが嫌で、先輩の手を繋いで教室の奥に行った。
掃除道具が入れられたロッカーは、廊下側から死角になってる。教室は使われていないから照明もついていない。どこか埃っぽさもあるけど、そんなことより、先輩と一緒にいたいって思った。
「...先輩...俺...」
「うん...なに。」
先輩の声が俺を甘やかす。
「...先輩と会えてうれしい...」
俯いたままで自分の気持ちを伝えた。
先輩の手は、俺と繋いだままだ。
ふふっと笑う先輩。
「うん、俺もミナミに会えてうれしい。 毎日あってるのにな」
繋いでいた手を先輩は、絡ませる。
こ、恋人つなぎ...嬉しい。
頬に熱が集まる。
そして、先輩は俺の目を見たまま、ゆっくりとキスをした。
「...せ、先輩...まってっ!...俺、こんなキス...できない...」
始めは唇だけがあうキスだった。これ、すげー嬉しかった。
だけど、角度が変わって何回かキスされて、徐々に先輩の息遣いも荒くなってきて気づいた。
なんか、やべーって。
先輩に顎をさりげなく押されたら口があくし、間から先輩のニュルリとした...。
驚きすぎてほんと、飛び上がったわ。
エロイことやエロイ知識は個人練習はできるかもしんねーけど、キスは無理。
練習なんてできないし、動画見ても、甘酸っぱーってなるのしかない。
お子様キスしか、したことがない。それも、ぬいぐるみだったし。
先輩は俺が無理だって言ってんのに、クスって笑った後、また、してきた。
「...やめ...ンン...んん...はぁ...ァ...ンン...ふぅ...」
吸われるし、追いかけられるし、その間に息もしなくちゃいけない。
ハード。
キスってハードなんだと、俺は知った。
「うー...」
キスってし過ぎると痺れる効果があるようだ。
俺は先輩にもたれて、不服を訴えた。
「...キスがうまかった」
「よかったじゃん、下手より」
「経験値の差を感じた」
「それは、個人的意見だ。」
「...追いかけられたりされるとは思わなかった。」
「不測の事態だな」
「もーっ! 初心者なんだから、少しは配慮をしてくださいよーっ!」
「ハハハ、でも、どうだった?」
「...時間が止まってた」
俺の言葉で先輩は満足。俺も、先輩とキスができて満足だった。
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