39、悔しさを受けとめる相手は

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39、悔しさを受けとめる相手は

『ぜってー、キレてどうかしてやろーって思うかと思ったけど、冷静過ぎて逆にお前に驚きだわ。 どうして、そんなに冷静なの?』 先輩の言葉に、俺は自分の考えを伝えた。 「...先輩と離れて、先輩のことをたくさん考えてたらさ。 それなりに考えるじゃん。  頭の中はカッとなったけど、先輩の声が聞こえた。  “こんな、くだらねーことで、怒んなよな、バーカ”って。」 先輩は、電話の向こうでゲラゲラ笑ってた。 『ハハハっ!それな。 本当にくだらねーもんな。  ヒー...腹がいてーわ。   …クス...でも、よかった。  お前の中で、俺が消えてないのがわかって。』 ―!! ドキッと胸の中が騒いだ。 スマホを握る手が震えはじめる。 ダメ...。 「...ッあ、当たり前じゃんっ!」 耐えてたものがみるみる零れ落ちていく。 「...っく、くっそーっ! 泣かせるんじゃねーっ!  …ったく、あのクソがっ! 俺の大切な...っ!」 怒りを先輩にだけ向けていく。 それが、俺の気持ちだし、それを先輩に聞いてもらうのが一番だって思った。 いつぶりだろう。 「はぁ...。ほんと、先輩の試合で悔し涙を流した時以来っすよ。  こんなに悔しいって思ったのなんて。」 俺の言葉に、先輩は、ずっと静かに聞いていた。 『...ミナミ...』 無意識に先輩が見ているような気がして、窓の外を見た。 月が少しだけ雲に隠れてる。 「...はい、先輩」 一瞬、間が空いた。 そして、 『会いたいな...』 先輩は、消えそうな声で言った。 胸がキュンっと閉じてしまいそうになる。 「...はい。会いたい...デス」 その日、通話状態のまま、俺たちは一言も話さなかった。 でも、先輩との距離は、一気に近くなったみたいだった。 (オマケ) ン? 切られたストラップは、どうしたかって? もちろん、俺の枕元で、俺を見てる。 「このストラップを、先輩だと思って、俺の枕元に置いておきますね」 『...まさか、それを握り締めながら...、一人で...』 「ーっ!!なんで、それをっ!...あっ...。」 『...ミナミ、そのストラップは、お前の家の鍵に付けておけ。』 うぅ...一番、手を出せないアイテムじゃないかぁ...。 「...わかりました。 先輩の写真で我慢します...。」 『...お前、ワザとかっ?! 会いたくなるだろっ?!』 「...先輩...。 好き」 『ったくっ!もーっ! ブツっ ツー...ツー...ツー..』 次の日、吉田先輩からメールが来てた。 『いつもより多めにスマホを見て、にやけている黒澤に、迷惑している』と。
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