41、由真不足2と

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41、由真不足2と

黒澤は、時折、由真を思う。 「先輩っ! 今日は、膝を傷めないためのいくつかの情報を伝授しましょうっ!」 一緒に弁当を食べる時に、ドヤ顔でこう切り出してくる由真。 由真を探すと、いつも図書館で調べ物をしている。健気なのに、それに気づかれたくないから、誤魔化す由真。友達に向ける時の笑顔と、自分に向ける時の笑った顔が違って見えるのは、君が特別だからだ。独占欲の塊なのかもしれない。 由真を思う。 お前は、お前で居られているか。 黒澤は、スマホの画面に映る由真を想い、伸びていく手に苦笑する。 今日だけ...。 ふとした時に見せるあの眼差しを思う。 啼かせ、零れる涙に歓喜する自分を想像する。 濡れた瞳と、震える唇、しがみつく力がより強くなる瞬間...。 君をまた、愛しく思う。 「......。」 吐き出した物を見て、虚しい気持ちが、コロンと残るのが、自分でもわかった。 遠距離恋愛というと、「純愛だよね」と、返す人がいる。 でも、「遠距離? 恋愛って、離れたらできないじゃん。 やっぱり、傍にいる方がいい」って、言う人もいる。 自分は、どっちだろう。 不安がないとは、言えない。 でも、それはお互いが思うことだと思うし、先輩も俺も、会えないから好きじゃないっていう気持ちはない。だけど、不安になる時はある。 手を繋いで歩いている恋人たちを見て、想う。 「...やっぱ、写真とは違うんだよなぁ…。」 温もりまでは残らない。 温もりだけは届かない。 電話やメールですぐに想いを伝えれる。 だけど、気持ちを言葉だけでは足りなくて。 今日も、俺はあなたを思うばかりです。
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