143人が本棚に入れています
本棚に追加
8、酔っ払いは、また、嵐を呼ぶ
あの後、悔しいから空き箱だけ先輩に持って帰らせてもらって廊下に出て、兄貴の部屋の入口に見えるように積み上げて置いた。
夜、仕事を終えた兄が、「っちょっ!」って、奇声を出してるのを聞けたから反撃終了。俺って、優しい。
そして、嫌がらせをされたというのに、兄貴は酔っぱらうとまた、俺を誘ってエロイ物ばかりを買うのだ。
「由真(ゆま)、お前、エッロいやつ、欲しいかぁ。」
いきなり部屋に入ってきた兄は、酒臭い息で話しかけてきた。
「くっせー、また、飲んで帰ってきたのかよっ、飲み過ぎると身体を壊すぞっ!」
兄は、酔っぱらうと変なモードに突入する傾向にあり、少々迷惑。
「あらー、由真チャンはオニーちゃまが心配ナンでちゅね。」
...うぜぇ。ちゃん付けに赤子言葉...。
「はいはい、そーですね、心配でちゅね」
適当に返したけど、兄は俺の答えに大満足だった。
「よしっ! じゃぁにーちゃんが何かいい物を買ってやろうっ!」
前科、エログッズ(男用)を買った兄。
当然、俺は警戒した。
兄は鼻歌を交えながら自分のスマホを取り出し画面を見ている。
回避するように俺は傍に行って仕方なく一緒に見ることにした。
「この前のはミスったから今度こそは...」
何度も何度もレビューを見ては止めを繰り返す兄に付き合いきれず俺は、兄の傍で寝落ちし、そのまま朝を迎えたのだった。
「...で、まさかと思うけど、また、ヤバいやつなんじゃないよな?!」
兄が箱を持って俺の部屋に現れた。
見覚えのある箱に、不安ばかりがよぎるのだが。
「大丈夫っ! 今回は、この前の詫びだっ! 友達にも、プレ、OKだっ!」
いちいち、リアクションを取ってくる兄にうざいと思うが、ここはひとつ、折れてやってもいいと思った。
で、早速、先輩に伝えると家に持ってこいって言われた。
先輩と俺は、目の前の箱を見つめて座っていた。
「...先輩、俺があけていいっすか?」
「お前の兄貴の事だ。 何が入っているかわからない。 また、前回のような...」
―!
「先輩、できたら、先輩にお願いしたいっす」
「うむ」
先輩は、慎重に箱をあけて中身をみて、固まっていた。
「...先輩、どうしたんすか? まさか、また」
くっそー、兄貴め、だましたのかっ!
「いや、お兄さんは実に良い人なのかもしれない。 俺はすごく思う」
?
先輩が箱の中から取り出したのは、俺でもハードルが高すぎるエロ下着だった。
―!!!
「うわぁぁぁ、これ、見たことあるっ! 写真ですげーもっこりって」
「おぉ、そうそう。これってすげーって思ってたヤツ。 俺、こんな下着は、勃たねぇ。...お前は?」
「俺もっすよ、何をまた買ってるの、兄貴っ!」
正直、俺の好みでもない。
だが、先輩は、一つの提案をしてきた。
「でもさぁ、このまま怒って突き返しても、ニーサンが喜ぶだけだよな。
ならさぁ、ミナミ。 これ、使ってみねぇ?」
―?!
「俺は嫌ですよ、先輩」
チッと舌打ちした先輩は、ある取引を持ち掛けてきた。
「...お前が俺に穿いて欲しい下着...俺、持ってるよ」
えっ、それは、スルーできない案件です。
―!!!!
「マジでっ!? 見たい、見させてっ! で、エロイことを...」
「なら、俺はお前の望んでいる奴を穿こう。 お前は、お前の兄貴に「大好評でした♡」って、返すんだ。だから、お前が着るのが一番だろう」
はいっと渡された下着を見て、俺は、途方に暮れたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!