五十日目

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五十日目

   *  久々の残業だった。  最近仕事でミスが続き、それが積もり積もって仕事が押したのだった。 (疲れた……。でも、社に行かなきゃ。今日は五十参拝目じゃない)  やっと折り返し地点だ――そう気持ちを奮い立たせたが、憂鬱なのには変わりなかった。  仕事疲れだけではない。蛇があからさまな妨害工作をするようになったのだ。鳥居をくぐるやいなや局地的に雨が降ったり、どんぐりやカタツムリが撒菱のようにまかれていたり、足元に絡みつかれて物理的に転ばされたりした。  それでも毎日頑張って参拝してきたのだ。残業くらいですべてをおじゃんにはできない。  鏡を見ると、脂が浮いてメイクがはがれていた。ポーチを手に取る。億劫だったが、マンションのエントランスで他の住人と鉢合わせしかねないので、直さないわけにはいかなかった。  最近、顔色がひどくくすんで化粧乗りも悪い。憂鬱な気分で再度鏡に目をやり――目を瞠った。  頬に、ぽつんとシミができている。  私は愕然とした。 (どうして。今までシミもほくろも、できたことなかったのに)
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