五十日目

3/3
前へ
/21ページ
次へ
「これ以上老いるのが嫌なら参拝をやめるといい」 「…やめないわよ」  結婚してやるんだから、絶対に――。ぎりと歯を食いしばった私を見て、蛇はふん、と笑った。 「荒れているな。男に振られたせいか?」  私は顔を上げた。――何で知っているのだ。 「結婚できない相手と縁が切れたのだ。よかったじゃないか。参拝効果だな」  私は蛇を睨みつけた。イライラの原因はそれだけじゃない。  先週、法事があったのだ。  産院で会った以来の妹は私を見るやいなや、「あれ? お姉ちゃん、なんか急に老けた?」と目を見開いた。さらには親戚連中に「お母さんにそっくりになってきたわねえ」「似てないと思っていたけど、やっぱり親子だわね」などと口々に言われたのだ。やつらの目に浮かぶ憐みと優越感――屈辱だった。  怒りを滾らす私の横で、蛇はのんびりとした口調で言った。 「日焼け止めを塗れ。昨今の女人(にょにん)は皆そうしている」
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加