六十七日目

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六十七日目

   *  その夜は月が煌々とあたりを照らしていた。  私は鳥居の脇にある石に座り、じっと俯き、震えていた。  ――老化が止まらない。  一参拝ごとに老いは確実にこの身を蝕んでいた。今や肌のたるみも小皴も惨たるものだ。骨格まで変わってきている気がする。  昨日より今日、今日より明日はもっと老いているだろう。恐ろしくて震えがとまらなかった。 「まだ六十七参拝だろう。それでもまだ年相応ではないということだ。百度を踏み抜けば、本当のお前の姿が見れるぞ」  鳥居の根元でとぐろを巻いた蛇がくつくつと笑った。 「…今からやめれば、元に戻る?」 「戻らぬ」  私は絶望し、足元に目を落とす。月明かりを反射して、裸足の爪に塗ったラメ入りのネイルが白々しく輝いている。 「最近、仕事が覚えられないのよ。ミスも多くて……」 「お前の能力が元はその程度なのだ。わしの加護により、相応以上の美しさや能力を得ていたのだからな」
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