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「……なんだって、こんなところに」
と葉名はベッドの陰にあるコンセントを見た。
たまたま引っ越しのためにベッドを動かして大掃除していたから発見できたが。
普段なら、センサーが反応しても、何処にあるのか見つけられないような場所だ。
リビングとか電話の側なら会話もよく聞こえるだろうに。
何故、こんな普段は人も居ないような片隅に、と思う葉名の頭の上から、そのコンセントを覗きながら准が言う。
「どうせ、陽子の前の彼氏が、浮気の確認のためにつけたんだろ?
じゃあ、ベッドの近くで正解じゃないか。
っていうか、なんで、小声だ」
「いえ。
我々が気づいたことを相手に気づかれるかと……」
「産業スパイとかじゃないんだ。
別に気づかれてもいいだろう」
と准は声を抑えることなく言ってきたが。
葉名は今、それとは違うことが気になっていた。
「……これ、ずっと此処にあったんですかね?」
「そうだろうな」
と軽く言った准は腕組みしたまま、盗聴器を見下ろし、
「俺たちのあんなことやこんなことも全部聞かれていただろうな」
と付け足してくる。
ひーっ、やめてくださいーっ、と葉名は耳を押さえ、しゃがんだまま小さく丸まった。
「別にいいだろ。
もう結婚してるんだし。
お前が俺の愛人とかだったら、ゆすられたりとかあるかもしれないが。
ああ、お幸せでいいことですねって言われるだけだ」
「……誰が言うんですか? それ。
盗聴している犯人がですか?」
と葉名が言ったとき、後ろから声がした。
「ねえ、なにサボってんの。
僕が一番やってるんだけど、掃除」
と花屋のエプロンをつけたままの誠二が掃除機を手に立っている。
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