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「葉名さん、掃除機買い替えなよ。
こういう昔ながらの奴って、引っ張ると転がるからさ。
僕、もうめんどくさいから、さっきから、掃除機逆さまになったまま掃除機かけてるんだけど。
……って、なにしてんの?」
と誠二も一緒に覗き込んできた。
「とーちょーきですっ」
と小声で葉名は教える。
ふうん、と言った誠二は、
「僕、今、家出て一人暮らしなんだけどさ」
といきなり語り出した。
「夜中にさ、いきなり風呂から、ごぼごぼごぼって湯もないはずなのに聞こえてきてさ。
そのあと、オオオオオオオ……ッて、オッサンのうめき声みたいなのが聞こえてきたんだよ」
「どうしたんですか、急に」
「いや、嫌がらせに怪談を聞かせてやろうかと」
「……怖い話好きの人で、向こうで、ワクワクしてたらどうするんですか。
っていうか、こっちが気づいてるって気づかれちゃうじゃないですか」
「いや、気づかれてると思うけど、もう」
と誠二は言う。
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