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「やっぱり、嫌がらせしてやろう。
黒板でも引っ掻いてみるか。
葉名、黒板持ってこい」
「いや、ないですよ」
「じゃあ、誠二、買ってこい」
と准は後ろを振り返る。
「……もう外したらいいんじゃないですかね? 盗聴器」
と葉名は言ったが、
「お前が外す気もなく、小声で話せとか言うからだ」
と言い返されてしまった。
「だから、ついでに嫌がらせしてやろうかと思ったんじゃないか」
と言う准の後ろで、突然、誠二が言い出した。
「僕歌うよ。
ギター持ってくる」
は? と声を上げる間もなく、そのまま出て行ってしまう。
パタンと玄関扉の閉まる音を聞きながら、葉名は訊いた。
「……誠二さんの歌って、人に聴かせると嫌がらせになる感じなんですか?」
「単に聴かせたいんだろ。
そういや、昔からよく夜の植物園でひとり弾き語ってた」
と言いながら、准は盗聴器に顔を近づける。
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