解散総選挙

1/3
30人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

解散総選挙

金バッチを撫でる。 初めてつけたときはエクスタシーを感じた。 代議士2期務めた。 バッジ・・金属部分は全て金メッキ。 メッキはいつか剥がれる。 でも手放したくない。 もうすぐ3期目をかけて総選挙。 人は影で私をツンデレ議員と呼ぶ。 甲田リエ42歳。 前髪長めのショートカット。 選挙の時はオレンジのダウンコートかジャンバー。 初当選は出身地の漁港の町から。 新しい風ならぬ、『新しい魚を国会へ』をキャッチフレーズにフレッシュさをアピールして 金魚みたいなオレンジ色のジャンバー着て戦い、現職の地元の名士の2代目に勝った。 初めてバッジを付けたあの日、黄金の風ならぬ、黄金の魚になった気がした。 議員生活も決して楽ではなかった。 宴会の3次会のワインバーの止まり木にブルーチーズを置かれたり、嫌がらせもうけた。 論破され泣いた夜もあった。 酒を飲んだらみんな本性と本音が出るのがよく分かった。 ポジション争い―――寸止めでは終われなくなった。無傷ではいられなくなった。 占い師は言った。 「やらせてくれなかった男の怨念が取りついてます」 「結構、やらせたけどなあ」 やがて選挙が始まった。 街頭演説に命をかけてきた。 AKBより有権者に握手をしてきた。 初日から駅前に昼に党幹事長も来てくれた。 圧倒的演説力で駅前を盛り上げてくれた。 メガホンをもって名前を言って地域を回ってくれるスタッフたち。 誰も出て見てないマンションにも「ベランダからありがとうございます!」 と叫んでいる。 そういうのもテクニックの一つだ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!