太陽に焦がれて

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 そしてその日の、下校時。  駐輪場で自転車の鍵を開けようとしていた所で、またしても陽に捕まってしまった。 「おーい、咲夜っ!  ちょうどいい所で会った。  ...駅までで良いからこのくそ重いカバン、乗っけてってくんない?」  何が哀しくて、よく知りもしないクラスメイトの男の事を、駅まで送り届けてやらなければいけないと言うのか。  ...絶対に、お断りだ。  そんな風に思っている事はおくびにも出さず、俺はまたニッコリと微笑み、答えた。 「俺の家、駅とは逆方向だから...。  ごめんね?」  自転車を車輪止めから外し、乗ろうとしたタイミングで。  ...彼は俺の言葉が聞こえていた筈なのに、ポイっとカゴに自身の小汚い紺色のリュックを投げ入れた。 「...えっと、塚田君?  俺が言った事、聞こえてたよね?」  顔はまだ辛うじて笑えているはずだけれど、(はらわた)が煮え繰り返りそうなほど苛立っていた。  なのに陽は俺からハンドルを強引に奪い、ニッと笑った。  ...嘘だろ。  ホントなんなんだよ、コイツ!  怒りを通り越してバカバカしくなり、つい吹き出してしまった。 「ほら、早くぅ!」  その笑いを了承の返事と受け取ったらしいこの男は、にんまりと笑って催促した。 「信じられないヤツだな、ホント。  まったく、もう...。  今日だけだからな。」  俺はちょっと苦笑して、陽の後ろに続いた。  今日だけだと、きちんと宣言したにも関わらず。  ...この翌日も、更にその翌日も俺はこの男に捕獲され、あれやこれやと理由をつけては、駅まで送らされる羽目に陥った。  そして結局俺はこの、身勝手でマイペースな男と二人、毎日どうでもいい話をしながら帰宅する事となる。  ...そう。  今にして思えば陽はこの日、俺の意思や感情なんかお構いなしに、俺の世界に強引に割り入ったんだ。
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