人生で一番幸福な日

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人生で一番幸福な日

 そしてその、翌日。  昨日同様、陽が家に遊びにやって来た。  ゲームをしたり、他愛もない会話を楽しんだり...そして合間に、何度もキスを交わした。 「...咲夜って、絶対キス魔だよね。」  クスクスと悪戯っぽく、陽が笑う。 「んー、どうだろ?  あんま経験ないから、分からないけどな。」  ククッと笑って、答えたんだけれど。  ...視線を感じて横をみるとそこには、不機嫌そうに唇を尖らす、陽の顔。 「えっ...、何怒ってんだよっ!?」  驚き、両頬を手のひらで挟み、強引にこちらを向かせた。 「あんま経験はない、って事はさ。  ...俺以外とも、こういう事してたっていう事だよね?」  あぁもう、コイツってば...。  何でこんなに、可愛いんだよ。  思わず噴き出すと、陽はますます唇を鋭く尖らせ、俺の鼻先に噛み付いた。 「...あるよ。  中学の時、女の子と付き合ってた。  でもそれは、単なる好奇心みたいなもんだったから。  ...本気で好きになった相手は、陽が初めてだよ。」  にっこりと微笑み、まだ尖ったままの唇に口付けた。 「咲夜ってさ、何て言うか...たらしだよね。  でもって、口がうまくて...詐欺師にでもなったら、良いんじゃない?」  真っ赤な顔のまま、陽は言った。 「そんなの、なりたくないし。  ...それに俺がもし詐欺師になって、他のヤツにこういう事しても、お前は平気な訳?」  笑いながら、またキスをして。  ...ねっとりと、舌先を自身の舌で絡め取った。 「嫌に、決まってるじゃん。  ...ホント、口が上手いよね。」  唇を離して飽きれ口調で、そう言って。  ...今度は陽の方から、キスをしてくれた。
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