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「ごめんなさいね」
じっと様子を観察していたこちらを見透かしたように、私のちょうど正面に座った羽田理津子が、突然顔を上げて言った。ソファに座ってた、他の男性二人も一斉に私の方に顔を向ける。
「いえ」
小さな声で、そう答えながらもつい、顔が強張ってくるのがわかる。
「でもたぶん……しばらく、帰れないかもしれないわよ。今言ったみたいな理由で。しょうがないでしょ」
「えっ?」
私が素っ頓狂な声を上げると、続けて男性二人も、致し方ないといった様子で肩をすくめたり、しきりにうなずいたりしている。
……冗談じゃない。
「あの、でもいったい、どういうことなんでしょうか?」
そう問いただすと、途端に羽田理津子は苛立たしげな声で言った。
「どういうことって、だからさっきから、何度も言ってるじゃないの」
呆れた顔で彼女がそう答えると、男性二人も困ったように顔を見合わせた。結局、私はそれ以上、二の句を継げなくなってしまう。
……ていうかさっきから、この人はずっとこんな調子なのだ。
前々からお母さんの言っていた通りだと、密かに思う。といっても、その情報も、ただの女性週刊誌の受け売りに過ぎないんだけどね。
羽田理津子は、これで何度目になるかわからないくらいの大きなため息をついた。軽い口臭? のようなものが、こちらまでかすかに漂ってくる。
と、まるでそれが合図であるかのように、彼らは私がお店からここまで運んできた、そのカバンをじっと見つめると、腕組みしたままもう一度黙り込んでしまった。
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