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「……とにかく、今一番の問題は」
突然また、羽田理津子が口を開いた途端、私はふいに我にかえった。
「この子が、うちの別荘ではなく……ここ、この隣の小堀さんの別荘に、何故か私と夫のこのカバンを届けにきたってことでしょう。違いますか?」
両隣にいる男性二人は、しばらく困ったように顔を見合わせてた。
「ええ。そりゃまぁ確かに、そうなんだがね。だからそのことを今、皆で必死に考えてるわけなんで……」
私の向かって左側にいる、白い髭を生やした初老の男性が、咳払いをしながら面倒そうにそう答えた。
おそらくきっと、この人が小堀、って人なんだろうと思う。
「ですから私はね、さっきからずっと、この子を疑っているんですよ」
羽田理津子が言った。私は覚えず、半座りのような姿勢になっていた。
「ちょっと、待ってください」
「いやいや、しかしですねぇ……」
と今度は右隣にいる、ずっと私の足ばっか見てた例のもう一人の男性が、間に割って入ってきた。この人の名前はわからない。ていうか、いったいどこの何者なのかもさっぱりだ。
「でも、しかしこうなると、やっぱりこの子には、しばらくここに残ってもらわなきゃならないのかもしれませんね」
たまらずさらに続けて抗議しようとした私を、両手を広げて右の男性は押し留める。
「いや、確かにね、君はただ、お店に置き去りにされてあったという、この忘れ物のカバンを……その電話で言われた通りに、ここに届けに来てくれた、というわけだ。そうだね?」
羽田理津子が、さっきから非常に疑わしげにこっちを眺めてる。
「ええ、そうです」
「それは十分に、こちらもわかっているんだよ。でもね……その、言われた通りに、ってところが、今一番問題になっているんだよね」
男性と羽田理津子が、互いに目を合わせていた。再度口を開こうとした羽田理津子を、男性がまた軽くいなす。
「いいかい、よく聞きたまえよ。つまりはこういうことなんだ。君は……言われた通りに、間違ったこの隣の別荘に、鳥越さんのカバンを持ってきてしまったわけなんだ。僕の言ってる意味、わかるかな?」
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