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……やだ、ちょっと待って。超怖いんだけど。
これじゃあまるで、お昼の二時くらいにやってるサスペンスドラマみたいじゃないか。
そういえば、この羽田理津子という女優は、その手のドラマの常連でもあった。
公園とかのベンチに座って、
「子供を助けてください、刑事さん! 私はどうなってもいいんです!」
とかって涙ながらに訴えるような、そんな役。
「……でもだいたい、夫は忘れ物なんて、滅多にしない人なんですよ。ましてや、どこかのお店に自分のカバンを忘れてそのまま行ってしまうなんて、絶対にありえないことなんですから。そういう不注意なところは、普段から一切ない人なんです」
羽田理津子の話を聞きながら、私は必死に今日の鳥越さんの、お店での様子を思い起こそうとしていた。
「それに、そもそもここにきたばかりで、旅行カバンを持ってまた出かけていくってこと自体が……」
「ああ、そりゃまあ、おかしな行動ですわなあ」
すると羽田理津子は、またひどく疑わしげに私の顔をジロリと睨みつけた。
「何ですか?」
「まあ彼女のことは後回しにするとして、しかし鳥越くんの行方がわからないなんてね……もちろん彼は今日、一度もここには来ていないよ?」
羽田理津子の顔は、ますます青ざめていくように見える。
でも、正直なことを言えば、私は彼女を気の毒だなんて、まったく思わない。
むしろーー。
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