【金色のそれは……】

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「ありがと」 瑠璃子様は素直に礼を述べます。 「ああ、よく似合ってる」 目を細めて言う男性には、瑠璃子様はふん、と鼻を鳴らして睨みつけました。 「お母さんじゃないからね!」 噛みつくような物言いに、男性は笑顔で答えます。 「判ってるさ」 それでも瑠璃子様の機嫌は直りません。 私はかたわらからそっと服の状態を確認します。やはり少し胸のあたりはゆるい感じが……いえ、いいでしょう。ウエストから下は問題ないようです。 それだけに、気になりました。 「──やはり、スカート丈が少し惜しいと思うのです」 「──ああ」 頷いたのは男性です。 「瑠璃子の方が大分背が高いからな」 「はい。これでも出来る限りウエスト部分から出したのですが、やはりまだ足りないです」 試着室から出て、こちらで用意しているサンダルをお履きですが、それでも前中心が数センチ浮いてしまっています。歩きやすいと言えばそうですが、全体の雰囲気は壊してしまいます。 「いいわよ、これくらい」 瑠璃子様はつま先でそこを蹴って言います。 「ここでケチることはないだろう。お金なら出してやるから」 「もう、そこまでしてお母さんに近付けたい?」 瑠璃子様はこのドレスは着たくはないのでしょうか? 金色の髪を払い、綺麗なかんばせの眉間に皺を寄せて怒ります。 「そうじゃない。つま先が出ていると、妻がしゃしゃり出るって言うからな」 それはジンクスですね、本来ならつま先が出るサンダルは駄目だというものですが、ドレスにも該当するのでしょうか。 「どうせ私は、気が強いわよ!」 瑠璃子様は踏ん反り返って言います。 「そんなとこも裕子に似てる」 お母様の名前ですね、そう言って男性は落ち着いた笑みを見せます、深い愛を感じました。 「そうやってお母さんを重ねる!」 「そんなつもりはない」 そうは言いますが、どこか遠い瞳をしていると感じるのは、気のせいでしょうか。瑠璃子様もふん、と鼻を鳴らして投げやりに言います。
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