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「判ったわよ、じゃあつま先が隠れるようにしてください!」
「承知いたしました」
瑠璃子様の前に跪いて、不足分を確認しました。それからデザインや布地の提案します。
「脇に足した布地をそのまま足しても良いですが、レースを足すのも良いような気がします。たっぷりギャザーを寄せてみて、と言うのは如何でしょう?」
「なんでもいいわ、お父さんが選んで」
「着るのは瑠璃子だろう」
「これを着ろって言ったのはお父さんじゃない」
「嫌ならやめればいいだろう」
「今更そんなこと言う!?」
男性は「判ったよ」と微笑みながら答え、ガウンのものとよく似た、豪奢なものをお選びになりました。
「承りました、こちらが仕上がったらご連絡したします、またご試着をお願いしたいので、早急に進めますね」
「判りました、その時はお父さん、また一緒に来てくれる?」
「お父さんって言うな」
いつものやり取りなのでしょう、瑠璃子様は「えへへ」と嬉しそうに笑って店を辞します。
ドアは男性が開けました、瑠璃子様は当たり前のように出て行きます。男性もぺこりと頭を下げて店を後にしました。
すぐにショーウィンドウの外を横切っていく姿が見えました、その時には瑠璃子様は男性に体を密着させて腕を組んでいます。そこだけ見る限りでは本当に恋人のようでした。
それでもお二人はその関係を壊すことなく、瑠璃子様は嫁いで行かれるのですね。それはしなくてはならない選択だったのでしょう。
きっとその選択は間違いはなかったはずです。
どうか、新しいご家庭でも、誰よりも幸せを感じられますように。
世界一素敵な花嫁になりますようにと。
祈りを込めてお仕事させていただきます。
終
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