お散歩

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お散歩

今日は雨もなく、風もそよぐ程度のいい天気。太陽も柔らかに光を落として、ぽかぽか陽気だ。絶好のお出掛け日和とは、このことを言うのだと思う。このところは雨具や風避けが必須だったから、余計に嬉しい。ぬかるんでも、でこぼこでもない地面を踏みしめる感触と、私とメイの二人分の影が映る様子に私は思わずスキップしたくなる。にんまりしてると、先の方で見つけたものに「あっ」となった。 「ねっ、メイ!また良いもの拾った!」 「…おー、いつも思うけど、よく見つけてくるね。」 いつもこうして感心してくれるメイに嬉しくなりながら、私は今回見つけたものを観察した。不思議な素材でできた、青色の小さなケースだ。開けてみると、ふかふかとしたクッションのような素材に、小さな銀色の石がついた青く小さな輪っかが納められていた。輪っかを手に取ってよく見ると、内側に未知の文字が彫られている。 「これも忘れ物や落とし物かな?この前拾った紙切れにもこんな文字があったから。」 「そうだねえ。多分そうじゃない?」 隅々まで確認した後、輪っかをケースに戻してリュックに入れた。そう、私が散歩で楽しみにしているのが、こうして散歩の途中で見つけたものを収拾することなのだ。何せ、私たちが今暮らしている場所は興味深いものでいっぱいだから。いつも何かしら必ず落とし物や忘れ物を拾い、色々と知っていくのが楽しくて仕方ない。今日が快晴で本当によかったと思う。久しぶりに大収穫があるかもしれない。悪天候のときしか見つからないものも勿論あるけれど、やっぱり行動範囲が広くなるから天気が良いのが一番だ。そして、私はふと閃いた。 「あっ、そうだ!今から例のあの街に行ってみない?これだけいいお天気なら、きっと今日は行けるはずだよ!」 「えー…でもあそこ私苦手だなあ。ちょっと気を抜いたら危ないとこだらけだし、そこらじゅう物騒な気配がするし。」 「大丈夫だよ、メイに何かあっても私なら助けられるから!それに、お宝探しに冒険はつきものだよ!」 「確かにアヴリルは頑丈だけど…キャプテン・ユノーシリーズの読みすぎだよ。いや、元々私が奨めたのが悪いけど。」 困った様子で、メイは頬を掻くように軽く触った。例の街というのは、前の散歩中に偶然辿り着いた街のことだ。そのときは生憎、豪雨が突然降りだして帰らざるを得なくなったけど。その後も、私の不調や暴風といった色んな理由で散策が先延ばしになってしまっていた。メイの言うことも一理あるとは思う。私も正直、あの街は危ないもので溢れていると理解しているし。けれど、これだけ快晴で私たちも絶好調なら今日こそは行けると思ったのだ。だから何としてでも今日こそは行きたかった。まだ見ぬ発見があの街に眠っていると思うと、怖くても気持ちが弾んでしまうのだ。キャプテン・ユノーも、目の前のお宝のチャンスは死んでも逃すなと言ってたし! 「ねえ、お願い!今日だけだから!今日を逃したら、またいつ行けるかわからなくなっちゃうし!そのかわり、あの街に行くのは今日で最初で最後にするから!お願い!お願い!お願い!」 「…はあ、わかったよ。アヴリルがそこまで言うなら。一応、備えはしてあるし。」 「!…やった!メイ、大好き!ありがとう!」 「やれやれ、しょうがないから親友のお願いを聞いてあげようか。ただし、危なくなったらすぐ帰るからね。それと、絶対離れないこと。わかった?」 「うん!大丈夫だよ、私言われなくてもメイとはずっと一緒だから!」 「…全くこの子は。」 感謝感激でぎゅっと抱きつくと、メイは微笑みながら私をそっと撫でた。もう、本当に大好き!
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