5.児玉華

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 織笠中に入ると、新鮮な顔が並んでいる。オーラというものがあるならば、入学式で見つけた二人にそれはあったと思う。折茂陽子(おりもようこ)丹羽雄吾(にわゆうご)だ。一際背が高く、どちらもモデルのような顔立ちをしていた。やっぱり織笠小は違うなぁと憧れにも似た感情を抱いたものだ。  クラスは講堂に貼り出されており、あたしは人ごみの後ろでジャンプしながら自分のクラスを探した。見つけると、すぐに憂鬱になった。織笠南小の問題児が勢揃いしているクラスだった。  そこから先は映画を観ているような感覚だった。  一年生のクラスは二階だ。十分後にはホームルームが行われるとのことで、皆が階段を急いでいた。身体中を緊張させていたあたしは何かに足をとられ、階段で転んだ。なんとか顔をぶつけることは避けたが、後ろに続いていた生徒に足やスカートを踏まれ、スカートに足跡がついてしまった。誰かが足をひっかけたのだ。 「天パの児玉、こけとるわ!」  階段の踊り場でよく見た顔が笑っているのが見えた。また、あいつらか。 「おいっ、一年! なにモタモタしとんや。走れっ!」  こちらの様子を知ってか知らずか、下からは教師の怒号が響いた。また、おんなじ生活か……。あたしはため息をつき、スカートを払った。周りの生徒が怪訝な目を向けて、あたしの横をすり抜けていく。 「ちょ、なんやねんお前!」  あたしは階段の上に目を向けた。ただ、驚いた。あたしを小学校からいじめていた男子が誰かに首根っこを掴まれたまま持ち上げられていたのだ。
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