4.丹羽雄吾

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4.丹羽雄吾

 幼稚園に入る前からの腐れ縁だ。家が隣同士ということもあり、いつも家の前で一緒に遊んでいた。小学校に上がると、さすがに男子と女子ということもあり遊ぶことはなくなったが、毎朝挨拶しては登下校を共にしていた。 「二人はお似合いねえ」  近所の大人たちがそう言ううちに、何だか他のやつとつるむ姿を見ると嫉妬するようになった。  折茂陽子のことだ。  幼い頃から「陽子」「雄吾」と呼び合う仲だった。下の名前で呼び合うのは俺だけだと勝手に思っていた。  あの頃、恋心があったとは思わない。陽子は勉強もスポーツもよくできた。俺も同じく、だ。陽子と競えるのは俺くらいだった。俺らは釣り合っていた。そう思っていた。  だから、幼稚園の頃から陽子が遊び始めた月島楓には違和感を覚えていた。あいつが陽子と親しくするのは、違うと思った。釣り合ってないじゃないかと思ったんだ。  妬んだのは月島楓だけじゃなかった。小学校の三年生になる頃から目立つ陽子の周りにはたくさんの同級生が集まった。男子も女子も、馴れ馴れしく近づいていた。それに嫌気がさしていた頃、その矛先が一身に月島楓へと向かったのだ。
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