5.児玉華

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5.児玉華

 ずっと丹羽雄吾(にわゆうご)くんのことを目で追っていた。そんな三年間だった。  中学に入ると、他の小学校と一緒になり、たくさんの見知らぬ同級生が増える。織笠中はあたしたちが卒業した織笠南小学校と、給水棟を挟んだ隣の校区である織笠小学校が一緒になる。  あたしたちが卒業した織笠南小学校は、生徒であるあたしたちから見ても先生たちの質が悪かったと思う。先生たちは問題に向き合わず、やりたい放題の男子たちは怒られないまま図に乗って成長していった。背の小さな子はいじめられ、お金持ちの家の子はいつもお金をたかられていた。あたしは生まれつき天然パーマで髪の色素が薄く茶髪のようだった。そのせいであたしも男子たちに髪を引っ張られたりしていじめられた。  学校からの帰り道。あたしはいつも高台にある給水塔を眺めながら帰っていた。 「あの給水塔の向こうは織笠小やんね」  いつも一緒に帰る梨花(りか)に何気なく言った。 「うん、織笠小ではいじめ無いんやって。みんなでいじめを無くすって、そんな活動してんて。お母さんが言っとった」 「梨花ちゃんのお母さんPTAやもんな。それで知ってんのか。ええなぁ、織笠小の子は」  あたしは織笠小校区に高くそびえる給水塔を毎日羨みながら過ごしていた。
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