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インターバル
「ここよ!」
「そういうことですか」
古川の案内でたどり着いたのは『古川食堂』と書かれた定食屋だった。
これで、彼女の「お金は取る」という発言にも納得がいった。
ちなみに、清水寺から古川食堂まではそこそこの距離があり、古川が清水寺周辺の地形に詳しくないのも理解ができた。
「パパ!ママ!愛娘が帰還したわよ!!」
古川が仰々しい言葉と共に、定食屋の扉を勢いよく開ける。
どうや彼女は家族の前でもこの調子らしい。
家族に対してよそよそしく接してしまう僕からすると、それは少し新鮮な光景だった。
「・・・あれ?」
古川の呼びかけに応える声は聞こえてこない。
「パパ?ママ?」
迷子の子どものように不安そうな表情で、厨房へ向かう古川。
嫌な予感を抱きながら、僕と新谷もその後をついていく。
「なんだ、いるじゃない!なんで無視するの?」
「・・・」
フライパンでなにやら炒めている古川の父親であろう人物と、料理を運ぶ母親であろう人物が視界に映る。
「ねえ。返事してよ」
「・・・」
しかし、古川の必死の訴えに返事はない。
「ねえ・・・」
目の前で手を振ってみたりするも反応はなく、やがて諦めたように手を下ろした。
古川瞳は普通ではないが、バカでもない。
気づいてしまった。いや、もしかしたら最初から気づいていたのかもしれない。
実の両親がジャックされていることに・・・。
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