インターバル

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「へい、おまち!」 器用に3人前の炒飯を運んできた新谷が、僕と自分が座る席、そして古川の前にそれぞれ配膳する。 古川は1品目の炒飯をすごいスピードでペロリと食べ終えると、厨房の新谷に追加でオーダーしていたのだ。 夜食に肉まん2つ、それから駅弁を2人前、そして炒飯も2皿。 もしかしたら古川は胃袋が2つあるのかもしれない。 もしくは、体内に地球外生命体を飼育しているか。 どちらにしろ、小食な僕には理解ができないことだった。 「それにしても謎やなあ」 「そうね。謎だわ」 「謎ですね」 管理局曰くジャックされたらしい人々。 今まで目にしてきたのは、その呼称通り俯いたまま喋らない人たちばかりだった。 しかし、古川食堂にいる人たちはジャックされているにも関わらず、普通にご飯を食べている。 古川の両親にしても、普段通り仕事をしている様子だ。 それでいて会話は全く聞こえてこない。 まるで僕ら以外の音声だけが、切り取られているような感覚だ。 「親父さんの炒飯には隠し味でもあるんやろうか?」 「なんで、みんな炒飯食べないんだろう?」 「一体どういう仕組みで・・・って、え?」 どうやら先輩たちの頭は炒飯でいっぱいらしい。 「ジャックの仕組みのことじゃないんですか?」 「あー、そっちか。確かにそれも謎やな」 「そうね。私は砂糖だと思うわ」 「砂糖やて!?ほんまかいな?」 「はあ・・・」 すっかり炒飯の虜になってしまった先輩たちに呆れつつ、新谷特性の炒飯を口に運ぶ。 「え、うま・・」 口いっぱいに広がる香ばしい風味。 絶妙な炒め具合でパラパラのお米たち。 今まで食べてきた炒飯が偽物に感じるくらい、新谷の炒飯は美味しかった。 「これより美味しい炒飯が存在する・・だと・・・」 人類解放に成功した暁には、古川食堂の炒飯を食べに来ると、密かに誓う僕だった。
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