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「ふう。美味しかったわ」
「ごちそうさまでした」
「おそまつさまや」
空になった食器を持ち、厨房へ向かおうとする新谷に「僕もやりますよ」と声をかけてついて行く。
厨房に着き、2人揃って洗い物を始めると、僕から徐に会話を始めた。
「先輩はどう思いますか?」
「砂糖の発想は無かったから今度試さんとな」
「いや、炒飯のことじゃなくて」
「わかっとる。冗談や」
会話の内容はふざけているが、真剣な眼差しは洗い物をする手先から一切離れていない。
「実はちょっと気になることがあってな」
「気になること?」
「ああ。それを確かめるのにちょっと俺の家に寄ってええか?」
「はぁ。それはいいですけど・・・」
確信がないからか多くは語ろうとしない新谷。
いつになく真剣なその表情は、二割り増しでカッコ良く見えた。
「・・・」
「・・・あれ?先輩?」
無口になった新谷を不思議に思い手元を見てみると、古川が使用したスプーンが握られていた。
「違うで!洗うのもったいなとか思ってへんで!このまま持って帰ろうかとか考えてへんからな!!」
「先輩・・・」
蛇口から流れる水をスプーンが遮り、扇状に薄い膜を張っている。
必死に言い訳をする新谷は、二割り増しでカッコ悪く見えた。
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