5人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
「ここや」
「え・・・でか」
古川食堂から徒歩10分。
新谷に案内されたのは、歴史を感じる風情ある大きな一軒家だった。
「先輩、お金持ちだったんですか?」
「まあ、それなりにやな」
否定はせず、嫌味にも感じない絶妙な言い回し。
新谷の変に謙遜をしないところは、僕が先輩に好感を持つポイントの一つだったりする。
「ただいまー」
自分の家でもないのに、古川が元気よく扉を開けて中へと入る。
「翔の家に来るのも久しぶりね」
「そうやな。中学ぶりか」
長い廊下を歩きながら、思い出に浸る新谷と古川。
そんな2人の背中を眺めながら、僕は少し寂しい気持ちになっていた。
僕が2人に出会ったのは高校に入ってから。
当たり前だが、それ以前のことは全くと言っていいほど知らない。
今日だけでも、今まで知らなかったことがたくさんあった。
古川と新谷が京都出身であること。古川の実家が定食屋であること。
新谷の実家がそれなりのお金持ちであること。
そして、古川の可愛い一面。新谷のかっこいい一面。
ジャックされた人類には申し訳ないが、今回の試練のおかげでオカルト部の結束は固くなっているように感じた。
最初のコメントを投稿しよう!