インターバル

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「ここの部分読んでみ」 新谷が指差したのは、IoH開発者のインタビュー記事だった。 記者:ヒトノインターネットは人の思考をコントールする最悪の兵器に化得るとの意見もありますが、そのあたりのことはどうお考えでしょうか。 開発者:至極真っ当な意見だと思いますね。しかし、便利なものは危険と隣り合わせにあるものです。飛行機で例えれば墜落の可能性もありますが、その確率を極力下げることで信頼を勝ち取り、今のかたちがあるわけです。 記者:確かにそうかもしれませんね。ところで、ヒトノインターネットは別の技術の開発途中に生まれた副産物だという話を伺いましたが、本当なのでしょうか。 開発者:よくご存知ですね。私にはどうしても完成させたい技術がありまして、その開発途中でヒトノインターネットは生まれました。 記者:ほう、そちらの技術も気になりますね。進捗はいかがですか。 開発者:そうですね。もう少しでβ版が実装できそうです。 記者:そちらも興味深いですね。完成楽しみにしています。本日は貴重なお時間をありがとうございました。 開発者:こちらこそありがとうございました。 「この時点で、人類がジャックされるような未来は危惧されとったわけや」 「なるほど。その最悪の事態が今起こっているわけですね」 この雑誌の刊行日は今からおよそ10年前。 ヒトノインターネットが世に出始めた頃だ。 「あれだけのセキュリティを突破したとなると、開発者側の犯行の可能性もありますよね」 「そうとも言い切れんな。少なくとも開発の第一人者やったこの人は、このインタビューの直後に亡くなったらしいからな」 「え、そうなんですか?」 「ああ。それにプログラム上のバグが原因とも考えられる」 「なるほど」 そう言うと、新谷は回転式の椅子に座り読書モードに入ってしまった。 手持ち無沙汰になった僕はふと古川の方を見る。 さっきからやけに大人しいと思っていた彼女は、『おわりの百歩』の13巻を読んでいた。
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