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ガチャッ。
一体どれくらいの距離を走ったのだろうか。
僕らを乗せたタクシーは、とある住宅街の一角で徐々にスピードを緩め、それが完全に停止すると同時に扉が開かれた。
「ここが目的地か?」
僕ら3人が下車すると、無人となったタクシーは足早に夜の街へと消えていった。
僕たちの前にあるのは、特別大きくも小さくもない、普通の一軒家だった。
IoHの地図にもこの家にマークがついているので、目的地はここで間違いないだろう。
『こちらはIoH管理局です。古川瞳様。新谷翔様。今山守様。どうぞお入りください』
管理局の言う通りに、家の中へと歩を進めるオカルト部。
タイミングよく来る通知にも驚かなくなっていることに、僕は乾いた笑みを浮かべた。
「お邪魔します」
「邪魔すんでー」
「いたずらするわよ」
1人だけ挨拶がハロウィン仕様だったが、それに対してツッコミをいれる人はいない。
代わりに新谷が差し出した飴を咥えると、古川は人が変わったように大人しくなった。
『準備が整うまで、リビングでくつろいでいて下さい。では』
相変わらず一方的な管理局からの指示に従い、僕を先頭に、玄関を上がってすぐ右にあるリビングへと向かう。
「なんや、埃がすごいな」
新谷がソファに座るのに合わせて、無数の埃が宙に舞った。
「翔、汚い」
「えー、俺のせい!?」
新谷にジト目を向け、近くにあった椅子に座る古川。
僕はソファの近くにあった座布団を叩いて地べたに置き、その上にあぐらをかいて座った。
『てててーれーれー、てれてれれっれれー』
真っ暗だったテレビの画面が突然明るくなり、陽気なBGMが流れ出す。
「なんや?」
『これは、ヒトノインターネット。通称IoHの開発者、清水余栄の半生を描いた物語である』
ナレーションと共に画面に映し出されたのは、30代前半と思われる男性だった。
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