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トンネルの夢を見ていた。灯りひとつないトンネルの夢。
出口には誰かが立っている。顔は判然しない。ただ、そこに立っているのが、俺にとって大切な人であることだけはわかった。
そこで待っている誰かを安心させてやりたくて、俺は足早に出口を目指す。けれどもどれだけ歩いても、その半円形の光はちっとも近づいてこない。
俺は焦り、苛立ち、徒労感に苛まれる。傍を川が流れているのがわかる。絶えることのない水の音。
やがて俺は目を覚ます。目を覚ました時、めくるめくような昂りと、ほんのかすかな喪失感だけが残っている。
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